江戸時代、佐賀鍋島藩の城内で女性のたしなみとして制作されはじめたといわれている佐賀錦は、細く裁断した和紙を経とし竹篦で自在に組んで多彩な絹の緯糸を通し、文様を構成して丹念に織る染織技法です。
佐賀錦の重要無形文化財保持者・古賀フミ氏は1927年佐賀に生まれ、幼少のころより曾祖母・美寿氏、母・八千代氏より指導を受け、佐賀錦の制作技法を習得し、修練を重ねられました。東京へ移り、作家として独立し伝統的な佐賀錦の技法に基づきながらさらに研鑚を積まれています。自宅の庭に藍や茜を栽培し染料として自ら染色した絹糸を用いるなど、素材を吟味し、織り方にも独自の創意工夫を重ねながら、大作の帯など佐賀錦の工芸品としての作域を広げる数々の上品で精緻な作品を日本伝統工芸展等に発表してこられました。
本展では古賀フミ氏の気品あふれる現代的な色彩感覚と意匠による作品約70点を展示いたします。この機会に多くの皆様に、佐賀錦の芸術的価値を高めた雅な世界を堪能し、心のこもった手仕事による絹の美しさを再認識していただくことができれば幸いです。