水墨画とは、ぼかしやにじみ、筆線の抑揚など、墨のゆたかな表情を生かした絵をさします。墨一色の絵もあれば、そこにわずかな色を点じたもの、彩色と墨色が調和した絵など、描き方は無限にあるといえるでしょう。
中国や日本の絵は、もともと線でかたどり、絵具で色をつけて描くものでした。水墨画が生まれたのは、中国の唐時代、有名な玄宗皇帝が生きた頃(7世紀末-8世紀前半)のことです。「墨は五彩を兼ねる」と言われ、草木や人物、山水など、色に満ちたこの世の姿が水墨によって表されるようになりました。日本では鎌倉時代後半(13-14世紀)以降、中国の絵に水墨表現を学び、数多くの画家が活躍しています。
本展は、春秋の二部構成によって水墨画の魅力を多角的に紹介するものです。伝馬遠「風雨山水図」、因陀羅「禅機図断簡」(以上、国宝)、牧谿「羅漢図」、伝周文「四季山水図屏風」、渡辺崋山「遊魚図」(以上、重文)など、さまざまな時代にわたる中国・日本・朝鮮半島の水墨画を存分にお楽しみください。