江戸と京都を結ぶ東海道は、江戸時代において現在にも劣らぬ重要な幹線道路でした。泰平の世が続き、街道の整備が充実したことにより、物資の輸送や人々の往来の安全が確保されました。江戸時代中頃からは、社寺参詣を目的とした庶民の旅が、次第に盛んになっていきます。なかでも十返舎一九の『東海道中膝栗毛』(1802)の刊行は、多くの人々を旅へと駆り立てました。そして、それに呼応して街道の景観や宿場町の様相を題材とした浮世絵版画が、数多く生み出されました。
今回の展覧会では、東海道五十三次をテーマとした浮世絵版画のシリーズを最初に世に出した葛飾北斎、四季を盛り込んだ宿場の風景と人物を巧みに描いた歌川広重の作品を中心にご覧いただきます。各々の個性によって表現された東海道の名場面は、現代に至るまでの人々の心を魅了しています。
ぜひこの機会に、当時の街道の風景、名物、人々の暮らし、行き交う旅人など様々な要素が凝縮された作品の数々をお楽しみください。