いつの時代にも、画家を志し芸術に没頭する多くの若者がいます。それは、戦時中という厳しい時代であっても同様でした。美術展に作品を発表することなく、一途に絵筆を持ち、真摯に絵に向かい描き続けた画学生がいました。
70年前、掛川から日本画家を目指し、一人の青年が上京します。
大正9年(1920)、掛川市高御所で生まれた桑原喜八郎です。彼は、12歳の時、美術部入部をきっかけに、画家を志しました。昭和15年(1940)には、東京美術学校日本画科(現 東京藝術大学)に入学。同じような志を持った友人たちとともに、研鑽に励み、芸術について論じ合い、作品を描いていました。下宿部屋には、完成した本画やその下絵が所狭しと置かれていたといいます。
喜八郎の絵は学業半ばであったため、画風は確立されておらず未熟な絵です。しかし、彼の絵に対する熱い思いや邪念のない澄んだ気持ちが、作品からは溢れ出ています。
ぜひ、この機会に画家を夢みた一人の若者の作品をご覧いただき、その時代や作品が語りかけるものを感じ取っていただければ幸いです。
今回は特別出品として、喜八郎が東京美術学校で共に学び、親しい友人であった日本画家 大山忠作氏の作品も展示いたします。あわせてご鑑賞ください。