今を去ること約1250年、天平勝宝5年(753)に鑑真和上は中国の唐から日本へ渡って来ました。最初に来日を志してから約12年、その間、5度にわたる渡航の失敗を経験し、さまざまな危険にも遭遇しました。幾多の苦難にも屈せず、仏教伝道のため来日を目指した鑑真の強い意思は、現代の我々にも深い感銘を与えます。
鑑真和上は、翌天平勝宝6年(754)に平城京へ入京し、東大寺大仏殿前に戒壇を設け、聖武天皇以下に戒を授けました。その後、東大寺の戒壇院を活動の拠点としていましたが、後に平城京内の一画を与えられ、そこに唐招提寺を開きました。
現在の唐招提寺には、堂舎・仏像・工芸品等々、信仰の所産が数多く伝来しています。特に、奈良時代の建築物が、境内に金堂・講堂・経蔵・宝蔵と四棟も現存する例は他にありません。このうち、天平の甍として知られる金堂(国宝)は、平成12年以来、足かけ10年にわたって解体修理がおこなわれてきましたが、その修理が本年(平成21年)秋に完了し、新しい姿でお披露目されます。
本展は、これを記念し、在りし日の和上の御姿を鮮明に伝える肖像彫刻の名作鑑真和上像をはじめとして、和上の出家から渡海そして遷化までを描いた東征伝絵巻、金堂安置の梵天・帝釈天・四天王像、そして今回の解体修理まで金堂の屋根を飾っていた創建当初の鴟尾など数々の寺宝を展示し、鑑真和上の偉業を讃えるとともに、唐招提寺の1,200年余の歴史と豊かな文化遺産を紹介するものです。本展を通じ、多くの方々に、文化を守り伝えることの大切さを感じていただければ幸いです。