人類史上、比類ない長さと広さを誇った古代ローマ帝国。本展では、「人類が生み出した最強の国家」と称される当帝国の誕生から繁栄の極みを、今に伝わる壁画・彫刻・工芸などの美術品と考古資料で紹介。300年にわたり、ほぼヨーロッパ全土に栄光を維持させた秘密に迫ります。
紀元前1世紀、天才政治家ユリウス・カサエルと、その遺志を継いだ養子のオクタウィアヌス(後の初皇帝アウグストゥス)の活躍によって、都市国家ローマは共和政から帝政へと大きな変貌を遂げました。第1章『帝国の誕生』では、新たな統治体制を築き整えた権力者たちの英雄的な姿を通して、帝国建設と継承の流れの歴史を概観します。
第2章『アウグストゥスの帝国とその機構』では、ローマの歴史、宗教にまつわるさまざまな作品から、帝国全土に平和をもたらしたアウグストゥスの統治システムを知ることができます。また第3章『帝国の富』でゃ、豪華な宝飾品や生活用品、農機具などによって、「最も幸福で繁栄した時代」の帝国の豊かさとそれを支えた堅固な社会基盤の存在が浮彫りにされます。
帝国絶頂の西暦79年、南イタリアのウェスウィウス(ヴェズヴィオ)火山が噴火し、南麓のポンペイは一瞬にして厚さ5メートルの火山灰に埋まりました。出品される壁画や銀食器などからも、統治の豊かな暮らしぶりが、あまねく地方にまで及んでいたことを窺うことができます。
ウェスィウス火山を挟んでポンペイとは反対の北麓では、5世紀末から6世紀初の噴火によってソンマ・ヴェスヴィアーナが罹災しました。東京大学は2002年からその地のいわゆる「アウグストゥスの別荘」で発掘調査を進めており、その最新成果も紹介します。本展は、ナポリ国立考古学博物館をはじめイタリア各地に所蔵される魅力的な作品約120点により、かつてない規模と充実した内容のローマ帝国展となっています。