作家・川端康成(かわばたやすなり 1899-1972)は、「伊豆の踊子」「雪国」など、伝統的な美に根ざす叙情性豊かな名作を数多く残し、1968 年に日本人初のノーベル文学賞を受賞した際の受賞講演では、良寛に触れて、その心の世界を発信しました。
画家・安田靫彦(やすだゆきひこ 1884-1978)は、優美な線描と典雅な色彩で、古代史への深い造詣に裏打ちされた歴史画を確立しました。また、その生涯は良寛に捧げられたといっても過言ではなく、良寛研究の第一人者でした。
昭和23 年、安田靫彦が川端全集の表紙画を描いたことが契機となり、二人の交流は始まりました。二人の絆をより強固にしたのは古美術品が好きだったことです。美術品コレクターとして安田は大先輩、川端は名品を入手すると鎌倉から大磯まで持参し、至福の時を共有しました。古美術は二人を支え、日本の良きもの、美しきものの探求となって創作に生かされます。
本展は、川端康成と安田靫彦の創作の源泉となった美術品や、共に敬慕した良寛の遺墨(安田旧蔵品と良寛記念館より出展)、安田靫彦の絵画など約250点を展観します。24年間に亘る二人の交流の中で共に感じ、憧れ、探求した日本美のありかをご覧いただければ幸いです。(会期中、一部の作品の展示替えがあります。)