現在根来と呼ばれる類の器物は既に平安絵巻に登場しますが、「根来塗」という呼称の語源は通説では鎌倉期に漆器を作った根来寺だと言われています。使用のために生まれた無駄の無い逞しいフォルム。その優れた造形感覚は現代的で、世界に通用するトップデザインです。更には使うことで、比較的耐久性が弱い上塗の朱漆が剥げて中塗の黒漆が無作為に顔を出します。赤と黒の織りなす旋律は斬新ですらありながら、年月に耐え毅然とした風趣をもつ器物の手摺れには、余分なものを捨てた「さび」の美が在ります。そして、そこにある刷毛目と経年で現れた木目の巧まざる文様。木と漆が作り出すねっとりとした温もりのある質感。「ねごろ」「根来もの」などと親しまれ、今も世界中の愛好者を魅了して止まない「根来」の世界をご堪能ください。