畦地梅太郎(1902~1999)は、愛媛県二名村(現・宇和島市三間町)出身の版画家です。上京後、版画技法と出会い、平塚運一や恩地孝四郎ら気鋭の版画家たちとの交流を通して独自の画法を確立。初期は主に都会風景をてがけますが、木活字の制作で目を傷めて帰郷したころより自然へと向かい、山や山男を主題に「山の版画家」として親しまれるようになります。山を愛し、自ら山を歩く人でもあった畦地の作品は、木版ならではの素朴さの中に、何気ない日常の情景や自然への慈しみをたたえて、今なお多くの人々を魅了しています。
本展では初期の鉛版画にはじまり、木版画による都会風景から故郷の自然や雄大な山々、山男の主題、そして抽象へと畦地の作品をたどります。また、版画雑誌、木活字や本の仕事、貴重な原画やスケッチブックなどもあわせて紹介することにより「自画、自刻、自摺」を旨とする創作版画が活況を呈した時代を経て、一つの際立った個性を開花させていった畦地梅太郎の画業を、さまざまな視点からご覧いただきます。