日本には美しい四季があります。そして月ごとにも、自然は趣を変え、さまざまな花や鳥たちが姿を見せて、われわれの眼を楽しませてくれます。古くから日本画家は、そのような季節の変化を鋭敏に感じ取り、作品にしてきました。それは横山大観も例外ではありません。
大観は、富士山をはじめとする風景画のほか、その細やかな感性をうかがわせる花鳥画の名品も数多く描いています。それらの中には必ずと言っていいほど、季節や月によって変容する自然現象、あるいは動植物などが描かれて、作品に豊かな風情を添えています。
本展では、大観の描く風景画や花鳥画の中から、12ヶ月のそれぞれにふさわしい作品を選び展示いたします。大観は、「花や鳥など、そのものの形態が正しく写されていなくとも、画面には春の感じなり、涼味なり、哀愁なりを暗示するだけの雰囲気を持たなければならない」という言葉を遺しています。そのような大観の情趣あふれる世界をご鑑賞ください。