日本では、古くから木に霊が宿ると考えられてきました。それはやがて仏の信仰と結びつくようになり、木は仏像の素材として長い間親しまれてきました。
ところが明治に入ると仏教彫刻の需要は減り、また西洋からの美術思潮の流入などによって、木彫は鑑賞、愛玩を目的としたものが中心となりました。
木は彫刻のための単なる素材に過ぎなくなってしまったのでしょうか?いいえ、そうではありません。明治以降も、木に何らかの性質を見出し、それを制作に結び付けようとする作家がたびたび現れました。まさに木に霊的なものが宿ると考えた橋本平八、水や火と同様に木に根源的な性質を見出した遠藤利克・・・彼らはそれぞれの関心に応じて、木からさまざまな性格を引き出しています。そして、そのようにして生まれた作品には、深みのある独自の表現がそなわっています。
この小企画展では橋本平八からはじまり現在活躍中の作家まで、こうした作品を、当館のコレクションを中心としたインスタレーションを含む約8点でご紹介します。