スイス・バーゼルを拠点にヨーロッパ各地で活動を展開すうディーナー&ディーナー(D&D)は、父マルクス・ディーナー(1918 1999)の事務所を息子ロジェ・ディーナーが引き継ぎ、主宰している設計事務所です。各々の建築物を年の時間・空間の連続の中において捉えるD&Dは、建物は新築であれ改築であれ現存する都心お一部にならなけれならないと考えます。D&Dが使う「都市建造物」(Stadebau)という呼称は、Architekture(建築、自立的な含みがある)ではなく、Bau(ドイツ語で建物の意、より匿名な含みがある)とStadt(都市)を組み合わせた独自の概念といえるでしょう。D&Dの考える建築家という職業は、個々の状況の中に意図的に埋もれ、またそのようにして新しい意味の発見に手を貸す存在であり、その作品は、自身のスタイルを登録商標のように掲げた有名な建築家の「強い」建築作品群と際立った対照を見せています。
D&Dの作品を見るということは、必然的に都市、またはその周辺環境を見るということでもあります。都市に対する徹底した取り組みは、数多くの都市・区域マスタープランを手掛けることへと繋がりますが、こうしたプロジェクトの分析はヨーロッパにおける建築家がいかに経済原理・法規・制度・行政・歴史と拮抗/協働する存在であるかを探る機会といえるでしょう。