桃山時代に大きな転機を迎え、江戸時代にかけて大きく花開いた日本陶磁の歴史。その展開において極めて重要な役割を担ったのが、九州陶磁でした。朝鮮半島から渡来した陶工たちは、唐津をはじめ九州の各地に窯を開き、茶道具から日用雑貨まで優れた陶器を生産する礎を築きました。日本初の磁器の焼成に成功した肥前の有田では、日本独自の美しさをもった磁器が誕生し、17世紀後期以降のヨーロッパ向けの磁器生産を通じて、その魅力は海外にまで知られるようになりました。
田中丸コレクションは、佐賀県の生まれで福岡玉屋百貨店の経営者・田中丸善八氏(1894-1973)が生涯をかけて蒐集した、総数400件を超える九州古陶磁のコレクションです。その特長は、唐津・伊万里・鍋島・柿右衛門など九州各地の主要な窯を幅広く網羅し、かつそれぞれの窯の代表的な名品を体系的に揃えている点にあり、質・量ともに卓越した内容のコレクションとして国内外に知られています。本展覧会は、同コレクションから厳選した名品を中心に約130件を紹介し、百花繚乱のごとく展開した九州陶磁の魅力を一望するものです。