1924年(大正13)に渡仏した佐伯祐三(1898-1928)は、この年の初夏、憧れの画家ゴッホが晩年過ごした小村、オーヴェール=シュル=オワーズを訪れました。ゴッホが眠る地で、佐伯はフォーヴィスム(野獣派)の画家ヴラマンクと出会います。ヴラマンクとの交流は、佐伯の絵画をまた彼自身を大きく変えることになりました。
オーヴェールでヴラマンクの画風を吸収した佐伯は、パリに移ったのち、哀愁漂うパリの街角を描いたユトリロの芸術に強く惹かれるようになります。差益はブラマンクの影響による力強いタッチと大胆な画面構成、そしてユトリロが得意とした、パリの横顔ともいえる風景をカンヴァスにとどめました。独自の絵画表現を獲得しようと格闘するなかで生まれた、彼の生命を刻み付けたような作品は、パリのサロンで評価され、日本の洋画界にも衝撃を与えました。
本展では、ポーラ美術館が収蔵する佐伯祐三、ヴラマンク、ユトリロの作品を中心に、佐伯の作品と彼をめぐるフランスと日本の画家たちの作品によって、佐伯芸術の形成とその影響を再検証いたします。