中原悌二郎(1888-1921)は,日本近代彫刻史上に燦然と輝く足跡を残した,旭川ゆかりの彫刻家です。本年10月4日が,中原悌二郎の生誕120年目にあたることを記念し,悌二郎の生涯と芸術を改めてご紹介します。
巨匠ブールデルが「これが彫刻だ」と評した<平櫛田中像>や,芥川龍之介に「この彫刻の若者に惚れるものはいないか,この若者は未だに生きているぞ」と言わしめた<若きカフカス人>など,悌二郎の作品は,近代彫刻のあまたの作品から突出して力強く,堅牢な存在感を見せています。これらの特質は,その生涯を彫刻一つに捧げた中原悌二郎の強い意志によるものです。
中原悌二郎は,妻・信に宛てた書簡の中で,自信の作品制作に対する姿勢について,次のように述べています。
「僕は自分の藝術をどうかして宗教的の深さにまで至らしめたいと願って居る。それには自分自身が先づ嚴肅な生活をいとなまなければならぬ。」
本展では,生誕から120年を経た現在も色褪せない迫力を有する中原悌二郎の現存作品全12点を始め,油彩画やデッサン帳,妻・信に宛てた書簡など,様々な関係資料をもとに,中原悌二郎の偉大な業績と,それを支えた造形思想をご紹介します。