東京都庭園美術館は本年、開館25周年を迎えます。先の20周年では「アール・デコ様式 朝香宮がみたパリ」展を開催いたしました。これに続き本展では宮邸が建設された〈1930年代・東京〉に軸を移します。この時代は関東大震災からの復興直後にあたります。通信手段や交通の発達、生活の近代化、女性の社会進出が盛んとなるなど、今に至る近代生活のはじまりの時代です。新しい大東京の風景を写し取った絵画、写真、絵葉書などにより、東京の都市生活文化を幅広く紹介します。さらに30年代の東京にみられる建築、日用品、ファッション、広告デザインなどを取り上げ、モダーンと呼ばれたアール・デコがどのように広く街中で受容されていたかを示します。
また朝香宮邸の設計を担当した宮内省内匠寮の技師たちの仕事にも着目し、特に和風アール・デコ様式の卓越した仕事と、本場アール・デコ様式からの影響を建築関係資料などにより検証します。本展は、1930年の時代相と宮邸における宮内省内匠寮の仕事を併せて提示することにより、旧朝香宮邸の特異性と同時代性を明らかにしようとするものです。