竹久夢二の故郷である岡山県邑久郡本庄村は、古くから芸能の盛んな街道筋の宿場町でした。越後獅子や人形浄瑠璃、傀儡師が頻繁に往来するこの村で、一家を挙げて芸事の好きな環境の中、幼い夢二少年の芸能への関心が育まれました。
そして現在、我々の目にする夢二の作品のなかには、広く舞台芸術に取材した作品が数多く認められます。
そのテーマは、彼が幼少期に目にした人形浄瑠璃や歌舞伎といった日本古来の伝統芸能から、早稲田実業在学時代に夢二の才能をいち早く認めた恩師・島村抱月の主催する芸術座の西洋翻訳劇、あるいは秋田雨雀原作の児童劇の舞台美術担当と様々な活動に及んでいます。夢二はまた、新しい娯楽として登場したシネマや、世界中からセンセーショナルな注目を集めたロシアバレエ団〈バレエ・リュス〉の動向にも関心を示しました。
本展覧会では、芝居や演劇、オペラ、映画などに取材した夢二作品を通じ、夢二の生きた大正時代に人々に愛された舞台芸術の世界をご紹介します。