古代から現代に至るまで「動物」は、狩猟の対象として、あるいは労働の担い手、家畜、ペットとして、人々の生活に深く関わってきました。美術の分野においても同様に、その姿は様々な形で表現され、しばしば創作活動を促す原動力となっています。
古くは信仰との関わりから生まれた動物像や、伝説や神話に登場する想像上の生き物たち、科学的な関心や好奇心から描かれた動物図など、「動物」をテーマとした作品は、その姿形を現すだけでなく、時には特別な意味を与えられながら、様々な動機や背景のもとに生み出されてきました。
近代に入ると、西洋絵画の本格的な導入とともに、過去のイメージや伝統的な表現を受け継ぎながらも、西洋の写実描写をはじめとする造形的な探究や作家独自の個性や内面の表出が模作され、「動物」もまた、時代状況や作家たちのメッセージを伝える重要なモティーフとなってゆきました。
この展覧会では、当館が所蔵する近現代の日本の洋画、日本画、彫刻などの中から、「動物」をテーマとした作品約80点を展示し、動物表現の魅力と多様性を探ります。「動物」という身近なテーマを通じて美術に親しんでいただくと同時に、優れた観察眼によって捉えられた動物達の姿をご鑑賞いただければ幸いです。