マウリッツ・コルネリス・エッシャーは、オランダに生まれ、建築家を志して21歳でハールレムの建築装飾美術学校に入学。恩師のすすめで版画を学び、高度な技法を身につけていきました。
その後、イタリアへ転居したエッシャーは、各地を旅して描いたスケッチをもとに、多くの版画作品を制作。この頃の作品には、細やかな描写、広がりのある空間の表現など、卓越した描写力が培われています。
1935年、イタリアを離れスイスへと移り住んだエッシャーは、旅先で見たアルハンブラ宮殿(スペイン)のモザイク模様に大きな感銘を受けます。幾何学的な連続模様に深いインスピレーションを得たエッシャーは、人間や動物などにモチーフを置き換え、独自の表現を生み出していきました。
さらに、後年に制作された、宇宙のような異空間や、無限に続く回廊、非現実的に組み合わされた建物など、不思議と謎がたくさん詰まったそのイメージの世界には、紙の上に無限の空間を生み出そうとする、エッシャーの深い思索と豊かな詩心が息づいています。
今日ではオランダを代表する作家のひとりとして、高い評価を受けているエッシャー。
本展は、世界有数のエッシャー・コレクションを所蔵する長崎のハウステンボス美術館のご協力を得て、版画作品に加え、立体やタペストリー、版木など約140点により、初期から晩年までの制作活動を一堂にご紹介します。エッシャーの迷宮的な世界を、心ゆくまでお楽しみください。