林静一は1945(昭和20)年中国東北部(旧満州)に生まれ、終戦を迎えて母親とふたりで帰国しました。
中学生の頃より漫画を描き始め、1962(昭和37)年、日本デザインスクール卒業後、東映動画(現在の東映アニメーション)株式会社に入社、「狼少年ケン」や「太陽の王子 ホルスの大冒険」といった名作にアニメーターとして携わりました。そして、1967(昭和42)年、漫画雑誌『ガロ』で漫画家としてデビュー、1970(昭和45)年には、高度経済成長期後期を背景に、繁栄の片隅で展開された若い男女の物語を描いた「赤色エレジー」が同世代の若者たちに広く受け入れられ、大きなセンセーションを巻き起こし、あがた森魚の同名ヒット曲のモチーフともなりました。
その後もイラストレータとして菓子メーカーのキャラクター「小梅ちゃん」をはじめ、企業カレンダーやポスター、レコードジャケット、歌番組のイラストレーションなどで活躍し、日本的叙情とモダンなセンスを感じさせるその女性像は「現代の竹久夢二」と称され、多くの人々に愛されています。
本展では、イラスト原画や近年の日本画など、春夏秋冬の季節の中に華やぐ美人画を中心に、その叙情あふれる多彩な世界を紹介します。