『室生寺は女人高野の名にふさわしく、可愛らしく、はなやかな寺である。伽藍も仏像も神秘的で、しかもあやしい色気がある。深山の杉木立の中に咲く山ざくらにもたとえられようか。
室生寺は、春夏秋冬それぞれに魅力があるが、椿、さくら、石楠花がつぎつぎに咲く春が一番室生寺の室生寺らしい季節かもしれない。時間をたっぷりとって、ゆっくりと自然と芸術の二つながらの美しさを味わうのがよいのである。』土門拳
奈良県の山あいにある室生寺は、土門拳が生涯最も愛したお寺であり、昭和14年から晩年の昭和53年まで、彼はここに少なくとも50回は通ったのではないかと言われています。近鉄室生口大野駅から室生寺まで、美しい室生川渓谷沿いに歩くこと約7cm。途中の大野寺、弥勒大石仏、そして室生寺、奥の龍穴神社まで、山全体に、平安時代から続く香気が立ちこめています。
展示するモノクロの大型パネルは、最大縦180cm×横360cmの大きなものもあり、室生の自然、金堂や五重塔などのお寺、国宝重文級の仏像の数々など、土門を魅了してやまなかった四季折々の「室生寺」が写真から迫ってきます。モノクロの魅力をたっぷりお楽しみください。