名物裂は、広くは鎌倉時代から江戸時代初期にかけて中国などから舶載された染織品で、大名家や社寺などに所蔵されたものもあれば、茶道の仕覆や袋、書画の表装裂などに用いられ、とりわけ茶道の発展とともに形成されていきました。これらは中国の元・明・清時代に織られた金襴をはじめ緞子・錦・間道などが含まれます。今回は名物裂の文様にスポットをあて、毎回テーマにそって、その種々相をみてゆくことにします。一回目はとりわけさまざまな表現がみられる牡丹唐草文をとりあげ、年代の明らかな永和四年(一三七八)銘の牡丹唐草文金襴裲襠を基に、牡丹花と唐草が制作時期によってどのように変化推移していったかをご覧いただきます。