海外に所在する日本の古美術品は日本文化を紹介する文化大使ともいうべき役割を担っています。しかしながら、海外に所在する日本の古美術品のなかには、気候風土の違いなどから損傷が進み、公開に支障をきたしている作品も少なくありません。文化庁、外務省、国際交流基金、東京文化財研究所は共同で平成三年度から海外の美術館・博物館が所蔵する絵画作品を大正に在外日本古美術品修復協力事業を始めました。その後、事業は東京文化財研究所が実施し、平成九年度からは漆による工芸品にも事業対象を拡大するとともに、平成十八年度からドイツに漆工芸品の修復工房を解説し、日本から漆の専門家を派遣して修復をおこなっています。これまでに絵画ならびに漆工芸品の修復協力をした海外の美術館・博物館は四十八館、修復点数は三百三十二点になります。
今回の展示では、海外での修復が難しいため日本へいったん里帰りさせ国内の工房において修復をおこない、平成十九年度末に完了した絵画五件と工芸品二点を公開いたします。この展示を通じご理解いただければ幸いです。