幻の姫谷焼
広島県の備後地方には、古くから姫谷焼と呼ばれる色絵磁器の皿がいくつか伝えられてきました。これらのやきものは、現在の福山市加茂町百谷にある姫谷という場所で焼かれたものと伝えられていました。しかし、いつ、だれが、何のための製作したのか、どのような作品が製作されたのかなど、その実体は明らかでない点が多く、長らく幻の姫谷焼とも呼ばれていました。
窯跡の発掘調査
戦前には、当時の深安郡広瀬村大字姫谷(現在の福山市加茂町)に姫谷焼の窯跡が存在する事がつきとめられました。そして、戦後の昭和52・53年までに何度かの発掘調査が実施され、姫谷焼の研究は大きく進展しました。
現在では、姫谷焼は有田焼(佐賀県)・九谷焼(石川県)とともに江戸時代前期に製作された初期色絵磁器の一つであること、色絵のほかに染付・白磁・青磁・陶器なども製作していたこと、17世紀後半の限られた時期に製作されたことなどが明らかになっています。
15年ぶりの展示会
姫谷焼の作品には個人蔵のものが多く、それらを鑑賞する機会は決して多くありません。そこで、このたび広島県立歴史博物館では福山ロータリークラブとの共催により、地元に伝えられている代表的な姫谷焼の作品に触れるための展示会を企画しました。
姫谷焼の展示会としては、平成5年に福山城博物館で開催されて以来、15年ぶりの企画です。ぜひこの機会に、江戸時代前期の一時期、備後に花開いたやきもの文化の精華をお楽しみ下さい。