いつの時代も、人は異国に対して一種の畏れを感じる一方で、強い憧れをもつようです。このところ、高級食器としてのヨーロッパ陶磁が人気を博し、テーブル・コーディネートで活躍している背景にも、おそらくある種の「異国趣味(エキゾチシズム)」があるのでしょう。しかし、日本人とヨーロッパ陶磁との出会いは、そんなにごく最近のことではありません。早くも江戸時代前期から日本人はヨーロッパのやきものを賞翫してきており、その歴史はすでに四百年近くにも及んでいます。
江戸時代の日本人に愛されたヨーロッパ陶磁とは、一体どのようなものだったのか? そして、日本へもたらされるヨーロッパ陶磁は、明治維新をはさんで、どのように変貌していったのでしょうか?
大英帝国がその繁栄を誇ったヴィクトリア女王の時代に活躍した著名な工芸デザイナー クリストファー・ドレッサーが選び、日本へもたらしたイギリス陶磁。約百年前にニーダー・シュレジエンのフリッツ・ホッホベルク伯爵から贈られたマイセン・ベルリンなどのドイツ陶磁。それらに加えて、オランダ・フランス・デンマーク・ハンガリーなど、ヨーロッパ各地の魅力的なやきものおよそ百七十件を紹介します。
さらに、ヨーロッパ陶磁のデザインの源流となった東洋のやきものや、逆にヨーロッパの影響を受けて作られた日本の陶磁器を通して、洋の東西を超えた文化の相互影響をさぐります。江戸~明治時代の日本人が実際に目にしたヨーロッパ陶磁の数々を通して、彼らが感じたであろう異国情緒にひたってみませんか。