19世紀フランスで活躍したミレーやバルビゾン派の画家は、田園風景や農民の姿を描きました。この時代、都市に住む人々にとって、田園風景はノスタルジックな思いをかき立てるものでした。そのため、絵画にあらわされた農村は理想郷とみなされ、収穫された穀物や干し草を積み上げた大きな山は大地の恵みとされました。この画題は、ジュリアン・デュプレやレルミットらサロンで活躍した画家たち、さらにはモネやピサロといった印象派の画家たちにも継承されました。
一方、日本の洋画家、浅井忠、黒田清輝、久米桂一郎らは、ミレーやピサロからの影響を受け、田園風景を描きました。明治後期から昭和初期に制作された洋画や日本画、南画、ポスターや写真でも、農耕・田園主題は重要なテーマのひとつでした。
本展では、国内各地に所蔵される19世紀フランス絵画や近代日本絵画の名品約150点で、「近代絵画に見る自然と人間」を多角的に紹介します。