昭和八年、書家上田桑鳩らは『書道芸術』創刊号で従来の書の枠を超えた新しい書を目指すことを説きました。奇しくも同じ年、秋田にも旧来の師風の継承を脱し、共に学ぼうと書家を糾合し奔走した人々がいました。比田井天来が地方三筆の一人と賞賛した書家赤星藍城と書道研究斗南会の人々です。彼らは中央との幅広い人脈をもとに、書家を招聘して啓蒙活動を行い、変わりつつある書壇の動向をリアルタイムで紹介して書への関心を高め、秋田書壇の隆盛を目指したのです。
残念なことに斗南会展は藍城の死の翌年に短い活動を終えました。しかし、そこで育まれた人々の書への情熱は、団体の枠を超えて創設された秋田書道展へと受け継がれ、現在の県書道界興隆の礎となりました。
本展は「書の泰斗 赤星藍城」と「秋田書壇の今」の二つの展示で構成しました。前半では平成十五年、赤星家よりご寄贈いただいた遺作を中心に、藍城の多彩な書風と文人画家としての一面をご紹介します。また藍城が私淑した日下部鳴鶴や、天来、巖谷一六など親交のあった書家の作品をご紹介し、昭和書壇の活況をご覧いただきます。後半は、これまで秋田県芸術選奨を受賞した方々の作品をご紹介します。斗南会の夢を継承し、研鑽を重ねる作家たちの作品を一堂に会し、見事に花開いた秋田書壇の今をお楽しみ下さい。