明治・大正期を中心に商業広告として発達した引札やレッテルには、華やかなもの、ユニークなもの、時代を反映したものなどが数多くあります。
引札は商品の宣伝や開店の披露などを書いて配る広告の札で、“お客を引く札”からその名が付いたといわれ、商業活動が活発になった江戸時代中頃から盛んに使用されるようになったと考えられています。江戸時代は木版印刷でしたが、明治に入ると銅版や石版などの印刷技術の進歩によって、より鮮明で華やかなものになっていきました。
さらに、自己の商品を他の商品と区別したり広告効果を上げるために、商標(トレードマーク)やレッテルもつくられて、商品に直接つけられたり容器・包装などに使用されるようになります。日本では江戸時代から家名や屋号などの図形を組み合わせたものがありましたが、明治時代になると商標条例が制定されて登録制となり、次第に意匠を凝らしたものとなって発展していきます。
木材や金属、プラスチックやビニールなど世の中に多くの素材が溢れている中、一般的には「紙」だけが、それ自体が商品にもなり、包装材にもなり、宣伝媒体にもなる不思議な素材です。
今回の展示では、紙の博物館所蔵品の中から、引札・チラシなどの広告をはじめ、レッテル、包装紙など、紙(紙製品)のためにつくられた資料を中心に展示いたします。(期間中、展示替があります)
“紙の紙による紙のための紙”の世界をお楽しみください。