満州の大連を中心に実業家として活躍した首藤定(1890-1950年、大分県臼杵市出身)氏が収集した東洋美術のコレクションは、第2次世界大戦後の混乱期に、その一部が、食糧難に苦しむ在留邦人救済のため、旧ソ連に譲渡されました。561点に及ぶその美術品の所在は長く不明でしたが、その後の調査等により、作品の多くがロシア国立東洋美術館(モスクワ市)に所蔵されていることが判明しました。大分県立芸術会館では、平成15年度から3ヵ年にわたり、文化庁の「芸術拠点形成事業」の助成を受けて、首藤氏旧蔵美術品(首藤コレクション)の調査を実施し、351点の所在とその保存状況を確認することができました。
今回の展覧会では、貴重な肉筆浮世絵や近代を代表する日本画家の作品、漢代から清代まで幅広く収集された中国陶磁等、ロシア国立東洋美術館所蔵の首藤コレクションの中から選りすぐった優品120点に、昭和50年に旧ソ連政府から返還された福田平八郎作品(京都国立近代美術館所蔵)の一部10点を併せて展示し、戦争のために首藤氏が果たすことのできなかった美術館設立の夢を、郷里の美術館で実現させると同時に、首藤氏の人道的な偉業を改めて顕彰します。