江戸時代初期、それぞれの書風で一世を風靡した近衛信尹、本阿弥光悦。松花堂昭乗の三名を、後世「寛永の三筆」と称します。室町以来の流儀書道を母胎としつつ、平安時代の書跡や典籍に関心を深めた彼らの書風は、斬新さと闊達な生命力を獲得し、近世初頭を彩りました。彼らの書法は、多少の変容をしつつ次世代に継承され、広い支持層と共に書流を形成してゆきます。なお、近衛信尹は寛永以前、慶長末年に没しており、「寛永の三筆」という呼称がなじまないとする考え方もありますが、桃山の文化的遺風の中での近世的書風展開をご覧いただくことを展示の趣旨とし、その多様な側面をご紹介したいと思います。