武者小路実篤記念館では、開館以来、武者小路実篤、白樺、新しき村に関する写真の収集、記録作業を進め、現在、その数は、約10,000点に及びます。数多くの写真からは、明治・大正・昭和の時代を生きた実篤が、文学・美術・演劇・新しき村など多彩な活動をしてきた様子やその存在感が伝わり、さらに実篤の素顔を知ることができます。こうした収蔵写真から時代を象徴するもの、見過ごしがちなスナップ写真を中心に選び、関連した書画や資料とともに展示し、写しだされた実篤の活動とその時代を探ります。
平成11、13年に開催された2回のシリーズに引き続き、今回は、終戦の混乱が残る昭和21年から、高度経済成長期を経て、実篤が90歳で亡くなる昭和51年4月までの、社会がめまぐるしく変化した30年間を取り上げる完結篇です。
本展覧会では、昭和20年代のベストセラー小説「真理先生」をはじめとした<山谷ものシリーズ>、昭和30~40年代にかけて、野菜や花などの画に言葉を添え、独特な作風で多くの人に親しまれた書画、また、これらの作品を使った複製画や陶器など様々な商品が人々の暮らしの中でよく見られたブームに注目します。さらに、老いを見つめながらも前向きに執筆や書画の制作に取り組む調布・仙川の家での日々など、写真を通して時代が求めた実篤作品や彼の暮らしを紹介します。