現在、京都国立博物館に収蔵される12500件にのぼる作品は、館蔵品と寄託品という大きな二つの柱からなっています。当然のことながら、どちらも一朝一夕ではなく、長い年月をかけ、次第に充実させてきたものです。
ここで、館蔵品の蒐集に目を向けると、その歴史は明治24年(1891)正月、1076点におよぶ作品が京都府より寄贈されたことにはじまります。これらは、明治8年に京都府勧業課に設置され、わずか9年で廃止された「京都博物館」の旧蔵品です。同館は当初、御所のなかに建設される予定でしたが、ついに実際の建築には至らなかった、いわば幻の博物館です。つまり、館蔵品蒐集の記念すべき第一歩は、いまから100年以上も前、幻の博物館からの寄贈品にはじまったのです。
残念ながら、これらの作品は普段、展示室でお目にかかるような一級品ばかりではありません。とはいえ、なかには旧公家や寺社から流出したとおぼしき古文書や写本、博物館で作成した模写本などが多く含まれており、「京都博物館」の作品蒐集のあり方、事業内容を知ることのできる超一級の資料であると考えられます。
この特集陳列では、「京都博物館」の旧蔵品のうち、とくに書跡関係の作品を中心にして、幻の博物館の実像に迫るとともに、京都国立博物館の奥深さを体感していただきたく思います。