北国生まれの丸木俊
丸木俊(1912~2000)は、秩父別町に生まれ、北海道庁立旭川高等女学校(現・旭川西高校)と東京の女子美術専門学校(現・女子美術大学)に学びました。夫の丸木位里とともに制作した「原爆の図」シリーズで国際的に知られていますが、若き日から晩年にいたるまで、旅先のロシアや南洋、欧米の風景を描き、また、絵本の原画を数多く手がけました。軽やかな線や勢いのあるタッチ、あざやかな色彩に特色のあるそれらの作品は、「原爆の図」にとどまらない俊の幅広い表現世界を示しています。
おばあちゃん画家・丸木スマ
丸木スマ(1875~1956)は、丸木位里の実母です。広島ではたらきづめの生涯をおくりましたが、70歳代半ばになってから日本画の絵具や墨を使って絵を描くようになりました。素朴な描写のなかに、みずみずしい感性や、伝統的な絵の約束事にとらわれない自由さがあふれたその絵画は、全国的な公募展でも高く評価され、スマは「おばあちゃん画家」として注目を集めました。
ふたりの女性画家の世界
俊は位里とともにスマの絵の独創性に気づき、制作を励ましました。一方、スマは被爆者として原爆の体験を俊に伝え、また、絵画表現でも影響を与えたように見えます。
本展では、こうした関係にも焦点を当てながら、丸木俊と丸木スマの絵画をご紹介します。俊の作品は、初期から晩年までの油彩やデッサン、絵本原画など。また、スマの制作の中からは、花やひとや生きものを描いた水墨彩色の絵画などを展示します。
生きるものへの愛とのびやかな絵ごころに満ちたふたりの女性画家の世界を、どうぞお楽しみください。