今新しい表現はどこから生まれてくるのでしょうか。引用や折衷のポストモダンの時期を通過し、他分野の情報を広く共有できる21世紀において、創造の現場に変化がおこっています。
21世紀の特徴は、個人が情報化され、価値観も多様化し、一方で多層なネットワークが発達したことです。ここ数年のジャンルを横断するクロスオーバーや創造の動向は、バックミンスター・フラーなどに象徴されるような、ユートピアを目指して諸学が融合した20世紀初頭を想起させます。ただ、大きく異なるのは、私たちの身体や世界が環境、政治問題を含めてより複雑な状況に直面しており、異ジャンルの横断、協動(シナジー)はこの状況を共に生き延びていくための切実な手段の一つとしてたちあがってきている点なのです。例えるなら、バイオテクノロジー、遺伝子組み替えなどの研究が生き延びるための一つの方法であるように。
「SPACE FOR YOUR FUTURE-アートとデザインの遺伝子を組み替える」展は、これらの表現の新たな動向をアート、建築、ファッション、デザインなど広い範囲のヴィジュアル・クリエイションから選んだ12カ国33アーティスト/クリエイターの作品を通してみせようとする企画です。SPACE FOR YOUR FUTUREというタイトルにおいて、「SPACE」は、単なる物理的な空間でなく、自分の身体とその外部を入れ子状に含んだ、一つの「環境」としてのスペースを意味しています。例えば服を着るという行為について環境と自身の内的スペースの関係の問題と考えたとき、服と家具、服と空間構成を一つとしてとらえていく考えが生まれます。領域横断の傾向は多くのクリエイティヴな建築家、デザイナー、アーティストにみられ、彼らは一つのヴィジョンのもとに、複数のジャンルの表現手段や方法を自在に操りながら表現をおこなっています。それはDNAの自在なプログラミングに似ています。彼らがこの展覧会テーマに対して、身体や空間に関するさまざまな提案を行います。
特に東京にはアート、ファッション、建築、グラフィック、プロダクト・デザイン、映像などがヒエラルキーなく水平に関係しつづけながら、新たなフォームを提案しているダイナミズムがあります。本展は、マルチ・ディシプリーナリーな創造を提案する都市、東京から発信する新たな文化的マニフェストとなることでしょう。