現実とはいったい何なのでしょうか。現実と夢の境界は果たして存在するのでしょうか。現実をめぐるさまざまな謎に正面から向き合った芸術運動が、シュルレアリスム(超現実主義)でした。近代社会の歪みが露呈し始めた20世紀初頭、パリに集まった芸術家によって立ちあげられたこの運動は、世界的な広がりを見せ、広範囲の文化に深い影響を及ぼしました。
シュルレアリスムは詩人アンドレ・ブルトンをリーダーに、多くの人物が関わり、多彩な活動を展開しましたが、その根底には人間の心をいかに解放できるかという問いかけが常にありました。そして、現実と非現実、意識と無意識、日常と夢、文明と未開など、理性によって分断されてしまった世界を再び統合し、私たちの精神の豊かな全体性を回復させることを試みていったのです。
この展覧会は、シュルレアリスムの作品を所蔵する国内の美術館が協力・連携しながら、代表的は作品約130点を展観します。また、シュルレアリスムを分かりやすく紹介するため、「序章:ようこそシュルレアリスムの世界へ」、「第1章:意識を超えて」、「第2章:心の闇」、「第3章:夢の遠近法」、「第4章:無垢なるイメージを求めて」といった展示構成によって、その全体像を読み解いていきます。
「超現実(シュルレアル)」に希望を託しつつ、純粋な生を求めてさまざまな表現を試みたシュルレアリスム。その本質について改めて触れることは、今日、私たちが現実をより豊かなものにして、生き抜いていくための大切な手がかりを与えてくれるでしょう。