絹はつややかな光沢、しなやかな肌触りなど他の衣服材料には見られない魅力的な風合いをもっています。絹と日本人とのかかわりは深く、正倉院の遺物にもその例をみることができ、長い間、上層階級の衣服材料として用いられてきました。江戸時代になると絹の一部は庶民階級にも及び、また近代には代表的な輸出品として日本経済をささえました。
縮緬(ちりめん)、羽二重(はぶたえ)、綸子(りんず)、金襴(きんらん)、緞子(どんす)などはよく耳にする絹織物の名称ですが、他にも多くの名称が残され、その種類の多さがうかがえます。これは、さまざまな場面で着用するそれぞれの衣服にふさわしい絹織物がつくり出されたことによるもので、日本人の豊かな衣文化を示しています。
本展では、着物をはじめ宮廷装束や能装束など日本の伝統服飾の中の絹織物を紹介し、その特徴と多様性をみていきます。また、信州大学繊維学部にご協力いただき、最先端の絹、蚕の研究についても紹介します。絹が日常的に用いられなくなった現在、日本の伝統服飾を通じて改めて絹を見直し、これからの衣服材料について考える機会となれば幸いです。
■ギャラリートーク 7月7日(土)、9月8日(土) 各回13:30~(先着30名)
■講演会 21世紀の日本のシルク文化を考えるシンポジウム パート2
「シルクのものづくりの新しい展開」 講師:服部芳和氏(織道楽塩野屋代表) 他
日時:7月25日(水) 13:30~16:00 (先着100名・無料)