9世紀から13世紀頃にかけて、現在のカンボディアを中心とする地域に栄えたクメール王国のもと、同時期の金属器や建築装飾、およびインドの文化に影響を受けたと考えられる、独特の装飾や器形をそなえたやきものが生産されました。この地域ではすでに灰釉陶(かいゆうとう)がつくられていましたが、10世紀末から11世紀にかけて黒釉陶(こくゆうとう)や灰釉(かいゆう)、黒釉(こくゆう)を掛け分けた陶器の生産もさかんになります。これらは宗教的儀式のため、もしくは王族のためのごく限られたやきものであり、量産化され国外へ輸出されることはありませんでした。よって、クメール王国の崩壊とともに姿を消す運命をたどります。
今回の展示では、クメール王国で同じ時期に作られていたとされる瓦や金属器を合わせて展示し、その洗練された魅力をご紹介します。クメール文化の一端を、ぜひご堪能ください。