身体は目にみえるかたちの肉体と直接触れることはできない精神が分かち難くひとつとなったものと言えるでしょう。意識するしないにかかわらず、走る、考える、生きる、といったさまざまな活動ですべてを行う主体として身体があります。そして生まれながらにして身体を備えた私たちは、それを親密でよく理解していると考えがちですが、しかし多くの可能性に満ちた身体の全容をとらえることは容易ではなく、未だ尽きせぬ魅力をたたえています。
本展は、作品中に図像として身体があらわされている作品を取り上げ、かたち、生命、振る舞いといった視点で向き合うものです。作家により他社の身体があらわにされた作品では、その造形的な魅力に触れるとともに、誕生や、それに連なる生命と死について思いを巡らせます。また私たち個人は、身体を媒体として社会とつながりを保っています。公私の狭間を行き来する身体は、他社からのさまざまな刺激を受けとめ、また逆に社会に発信することも可能です。作家自らが自分の身体をあらわした作品においては、社会の構造に対し発言し、私の在り方について問いかけるなど、他社と対話する身体を見出すことができるでしょう。
本展には岸田劉生、猪熊弦一郎らによる絵画やジャコメッティなどの彫刻、石内都、澤田知子ほかの写真作品や塩田千春の映像といった多岐にわたる表現方法で国内外の16人の作家が製作した作品41点が出品されます。これらの身体が奏でるさまざまな音色を、鑑賞者の身体全体で感じとっていただければ幸いです。
主な出品作品
岸田劉生「裸婦」
油彩・カンヴァス 1913年 大原美術館所蔵
コンスタンティン・ブランクーシ「うぶごえ」
ブロンズ 1917年 名古屋市美術館所蔵
猪熊弦一郎「少年」
油彩・カンヴァス 1922年 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館所蔵
アンリ・マティス「ダンス」
エッチング1935-1936年 横浜美術館所蔵
アルベルト・ジャコメッティ「女性立像」
ブロンズ 1952年 徳島県立近代美術館所蔵
ギルバート&ジョージ「デス・アフター・ライフ」
写真1984年 大阪市立近代美術館建設準備室所蔵
石内都「傷跡-1976、事故、ニューヨーク」
ゼラチン・シルバープリント 1996/98年 国立国際美術館所蔵
塩田千春「バスルーム」
ビデオ 1999年 個人蔵
森・・・