束帯(そくたい)や女房装束(にょうぼうしょうぞく・・・いわゆる十二単)に代表される宮廷貴族の服飾は、奈良時代に着用されていた唐風の衣服が変化して平安時代に成立したものといわれています。
その形式は儀式や行事などの先例をまとめた有職故実によって後世に伝えられ、明治時代に至るまで公家の服飾として用いられてきました。
これら公家の服飾は「かさねの色目」と呼ばれる重ね着した衣の配色の美しさや、そこに織り出された雅やかな文様といった、独特の魅力に溢れています。
長い年月を経て変化した面はあるものの、現存する装束からは華やかな王朝文化の様相をしのぶことができます。
本展では、当館が所蔵する吉川観方コレクションから、男子の袍(ほう)、直衣(のうし)、女子の袿(うちき)など江戸時代後期から明治時代にかけての公家の服飾品を陳列し、王朝文化の精華とも言える装束の美をご覧いただきます。
また、御簾(みす)や几帳(きちょう)などの調度品や王朝文学における有名な場面は、後世に至っても文様として用いられました。
コラム展示として、袱紗(ふくさ)や扇子などの工芸品に表現された王朝風俗を取り上げ、当時の人々が王朝文化そのものに対してどういう認識を抱いていたかを探ります。