今年は、20世紀を代表する美術家マルク・シャガールの生誕120年にあたります。シャガールは、1887年7月7日に、ロシア、現在のベラルーシ共和国にある寒村ヴィテブスクの貧しいユダヤ人の家庭に生まれました。パリに出て豊かな色彩感覚を開花させるも、二度にわたる世界大戦の戦火や、ヨーロッパ中を踏みにじったナチ政権によるユダヤ民族迫害、アメリカへの亡命、制作の霊感の源であった愛妻ベラの死去など、さまざまな苦難が彼を襲います。しかしそれらを乗り越えて画業を深め、詩的で豊かな色彩表現と物語性を湛えたシャガールの絵画は、世界中の人々に愛と希望を与え続け、1985年、97歳でその生涯を閉じました。
本展では、愛の世界を描き続けたシャガールの生誕120年を記念し、初の本格的な挿絵版画集『死せる魂』や、シャガール・リトグラフの最高傑作ともいわれる『ダフニスとクロエ』などの版画集を中心に、愛や生命への賛歌を奔放な描線と、踊る色彩で幻想的に描いたシャガールの油彩画、版画作品など約270点を当館コレクションから特別展示します。