水の都ヴェネツィアは、9世紀には共和制を確立、ローマ教皇庁やビザンティン帝国、神聖ローマ帝国などとの巧みな外交と海上交易によって、18世紀末に至るまで、独立性を堅持しながら、独自の文化を形成してきました。
美術の分野では、15世紀初頭にはビザンティン美術の影響から脱却し、フィレンツェの革新的美術動向やアルプス以北の美術などを積極的に受容して、その風光と自然に恵まれた独特の風土から、イタリアルネサンスを代表する巨匠を次々と生み出し、豊かな色彩と抒情性に満ちた絵画世界を展開するとともにバロックやロココ美術の展開に大きな刺激を与え、近代の西洋美術の展開の豊潤な源泉ともなりました。
本展では、ジョルジョーネ、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼが活躍したルネサンス期からカナレット、ティエポロ、ロンギなどが活躍した18世紀までのヴェネツィア絵画の黄金期の全貌を、クエリーニ・スタンパリア美術館(ヴェネツィア)、ドーリア・パンフィーリ美術館(ローマ)、アカデミア・ディ・サン・ルカ美術館(ローマ)、サバウダ美術館(トリノ)などの美術館所蔵品並びにヴェネツィアのアンティキタ・ピエトロ・スカルパをはじめとするプライベート・コレクションにより、神話や宗教画、寓意画、祝祭に彩られた都市景観画、風俗画など約70点の油彩画により紹介します。