独自の内面世界を写実的技法によって克明に描き出した20世紀を代表する画家サルバドール・ダリ(1904-1989)。生まれ故郷のスペイン・カタロニアを思わせる荒涼とした大地を背景に、見方によって違った姿に変化する「ダブル・イメージ」などの技法を駆使して描かれた作品は、溶けた時計や群がる蟻といった忘れがたいモチーフを通して、私たちの心の底に横たわる非日常の世界を呼び覚まします。その夢と現実が白昼夢のように融合したダリの芸術は多くの人々を魅了し続けてきました。 2004年はダリの生誕100年にあたり、世界各地でこれを記念する展覧会が開かれました。本展は、「ダリ生誕100年記念」プロジェクトの一環として、スペインのガラ=サルバドール・ダリ財団およびアメリカのサルバドール・ダリ美術館の全面的な協力のもとに開催されるものです。油彩画約40点に加え、今回特別に展示されるダリ財団秘蔵の手稿やドローイング、さらには広告デザイン、舞台衣装などを交えた約180点の作品を通して、絵画のみならず、あらゆるものに対して稀有な才能と熱情をもって取り組んだダリの多面的な世界をご覧いただきます。