19世紀英国で最も傑出した芸術家・思想家のひとりであったウィリアム・モリス(1834~1896)は,近代デザインの創始者として知られています。モリスのデザインした壁紙やテキスタイルのパターンは,多くの人びとに愛され,100年以上を経た現在でも日常生活の中に脈々と生き続けています。
モリスは,はじめ聖職者を目指してオックスフォード大学エクセター・カレッジに進みます。しかし,美術評論家で社会思想家のジョン=ラスキンが著した『建築の七灯』や『ヴェネツィアの石』を読んで触発され,芸術に目覚めました。また同時に,E.バーン=ジョーンズ,D.ゲイブリエル・ロセッティといったラファエル前派の画家たちとの交流を通じ,しだいに建築や美術への理解を深めていきました。
1861年,モリスは,友人たちと「モリス・マーシャル・フォークナー商会(1875年にモリス商会に改組)」を設立しました。設立当初は,ステンドグラスの制作を主な仕事としていましたが,後に織物やプリント地,壁紙など室内装飾の総合的な活動を通して生活の芸術化を図るという構想を形にしていきました。
この展覧会は,モリスが監修したオール・セインツ教会をはじめとする英国各地のステンドグラス21点をフィルム展示するほか,オリジナルの壁紙,テキスタイル,家具,タイル,ランプ,書籍など約100点を展示し,モリスの多彩なデザイン世界を紹介します。