ヴェナンツォ・クロチェッティ(1913-2003)は、イタリア中部のジュリアノーヴァに生まれました。孤児で育った彼は、独学で素描の修練に励み、ヴァティカンの美術品修復所で経験を積み、彫刻家を志します。1938年のヴェネツィア・ビエンナーレで彫刻大賞を受賞。1966年にはサン・ピエトロ大聖堂門扉のためのレリーフを完成させます。1989年には世界の平和を願う大きな騎馬像を完成、その作品は世界各国を巡回し、高い評価を得ました。華々しい活躍をみせたその作風はイタリア彫刻の伝統を踏まえ、大胆なデフォルメと洒落たポーズ、不思議な表情をみせる作品は洗練された魅力に満ちています。また、彼はマルティーニの後任としてヴェネツィア美術学校で教鞭を執るなどして多くの後進を育成しました。本展覧会では、頭像・胸像、女性像、男性像、マグダラのマリア、騎馬像、劇的な小品、動物像、レリーフなどの代表的な彫刻作品約50点に加え、素描等も展示し、クロチェッティの全貌を紹介するまたとない機会となります。
この展覧会は、ローマのクロチェッティ財団および2004年に開館したクロチェッティ美術館の全面的な協力によって実現したもので、日本では、1998-99年の展覧会以来、九州では初めてで、没後初の本格的な回顧展として、当館のみの単独自主企画の展覧会として開催します。