シャガールの絵の魅力は、ぎすぎすした日常を楽しくさせるところにあります。たとえば、空を舞いながら抱擁する新郎新婦、クラリネットやバイオリンを奏でる楽しげな動物、微笑みながら月と溶け合う太陽、こんなに軽快で美しいイメージを生み出した画家は、シャガール以前にはなかったといっていいでしょう。
しかし、それらのイメージは、ほんとうのところは何を意味するものなのでしょうか。「わたしの絵に隠し場所があれば、わたしはそこに自叙伝を滑り込ませる」ということばをシャガールは残してくれていますが、絵の中に隠されてきた彼の人生の断片は、じつは目で見て理解できるほどに分かりやすいものではありません。
そこで本展では、シャガールの表現のなかでももっとも重要な愛の表現について、深い考察を加えます。それによって、彼の表現全体について理解をよりいっそう深めることが本展のねらいです。会期中には、関連イベントとして、コンサート、講演会、あるいはリーディング・コンサートなどを催し、目と耳をつうじて、さまざまにシャガールの絵の魅力に迫ります。