棟方志功(1903-75)は、神仏や自然、文学、故郷への想いなどを主題に、情熱的で生命力溢れる版画作品を数多く生み出しました。棟方の彫りは、深く力強く、疾走感に満ちており、時に荒々しささえ感じさせます。一方、芹沢銈介(1895-1984)は、人々の暮らしや身近な生活道具、草花や四季の景色などにあたたかな眼差しを向け、それらをテーマに着物やのれん、本の装幀、屏風といった型染の作品を制作しました。芹沢の模様は、華やかでありながら優しく温和で、洗練された印象を観る者に与えます。
一見すれば対照的な作風の棟方志功と芹沢銈介ですが、両者の作品はそれぞれに明るく、生きることを祝福するかのような力を湛えています。また二人はともに、民芸運動の旗手であり高い審美眼をもつ柳宗悦(1889-1961)の強い影響を受けながら、日本の伝統技術の中に新たな世界を切り開いた作家です。そして、この岡山の地にも多くの足跡を遺しました。
本展では、およそ70点の作品によって、棟方志功と芹沢銈介の美の境地を紹介します。