三沢厚彦(1961-)は現代彫刻の世界で今、最も注目を集める作家のひとりです。特に近年は動物をモチーフにした木彫作品を精力的に発表し、弱冠40歳で第20回平櫛田中賞を受賞するなどその実力が高く評価されています。また、美術愛好家はもとより幅広い層に熱心な支持を広げているのも三沢作品の特徴です。楠の丸太から削り出された実物大の動物たち(「ANIMALS」)は、あるときはふてぶてしく、また愛嬌たっぷりの表情をみせ、生き生きとした存在感を主張し見るものに直接迫ります。
三沢作品の特徴となる、ノミの跡がはっきりと残る鉈(なた)彫りと、彩色による木彫作品は現代では稀少なものとなっていますが、そもそも日本では古くから伝わる伝統的な手法です。三沢は自身が持つ極めて鋭敏で現代的な感性を基礎にしながら、日本に古くから伝わる彫刻の伝統を踏まえることで新たな彫刻表現の可能性を押し広げました。これにより彫刻本来がもつ圧倒的な存在感と重量感が、新鮮な感覚をもって蘇生されたのです。
こうした魅力は「ANIMALS」を見ていただければただちに理解されるでしょう。一度見たら忘れられない、その独特の作品世界。決して見るものに媚びない充実し内発する存在感は、われわれが久しく忘ていた彫刻をみる、感じる喜びを蘇らせてくれます。
この展覧会は、「ANIMALS」の作品群を加え、絵本と画集で好評を博したドローイング、初期の珍しい作品を加え、彫刻家・三沢厚彦の楽しく、ゆたかな作品世界を紹介いたします。
出品作品
彫刻作品 約120点
デッサン等約30点
アトリエ再現コーナー 他