「初めに言葉ありき。言葉は神と共にありき。言葉は神であった。」(『新約聖書ヨハネの福音書1章1節』)と聖書が語りかけるように、言葉は人間の行動を規定してきました。鳳凰や龍などの想像上の生き物たちは、書物の中で形を整え、artの中で具体的な姿態を得てきました。また、洋の東西を問わず、書物に著された物語は、絵画や工芸によって具体的な形を持つことで私達に共通に認知されたものとして理解されるようになります。
我が国では、平安時代の終わりに巻物の形に文字と絵画によって物語を表わした絵巻が作られます。『伊勢物語』や『源氏物語』等の作り物語で始まった絵巻は、扱う主題を多様化するとともに形式も様々に変容していきます。
今回の展覧会では、『源氏物語』等の日本の古典を題材とした物語絵の世界、伝説の中に息づく者たち、漢文学の世界、文学の挿絵、その他の5つのテーマに分け、約90点の作品をご紹介いたします。
ぜひこの機会に、物語るアートを前に、作品が語りかける世界に耳を傾けてみていただければ幸いです。