現代の日本においてトレーサビリティという発想が注目されている。世の中のあらゆるモノが、どのような素材を用い、どのような工程を経てそこにあるのかという、産業界の視点である。ひるがえって、現代の造形表現においても、「結果」としての美しさだけでなく、それをどのような素材、メディウムにより、どのようなプロセスを経て成立させうるかということに意識的な作家たちが現れてきている。
レディ・メイドや発注芸術など、20世紀美術が造形表現における手わざの放棄を認め、素材との距離を問わなくなった現代において、それらは、もう一つの表現領域を形成してきている。作家たちはそれぞれの素材と真摯に向き合い、それを各自のフォルムとして成り立たせるために、それぞれの素材の性格に即した構造を工夫する。
素材と技術から構造へ、構造からかたちへ、かたちから空間へという発想のもとに制作を展開する現代の染め・織り・金工の各作家たちの作品を通して、現代における造形表現の在り方を考える展覧会である。
出品作家
織り+テキスタイルデザイン
小名木陽一・久保田繁雄・須藤玲子
染め
福本潮子・福本繁樹・八幡はるみ
金工(鍛金+熔接)
橋本真之・留守玲
出品点数
約50件(ただしインスタレーションを1件と数える)