東洋においては、不老長寿や無病息災、五穀豊穣、富貴栄華あるいは子孫繁栄といった人々のさまざまな願いを反映し、これらをかなえる神通力をもった神仙が数多く産み出されてきました。
そしてその多種多様な姿を写し留めた神仙図は、中国や日本の絵画を内容豊富で魅力あるものにしています。
中国では、特に元時代以降、劉海蟾(りゅうかいせん)と李鉄拐(りてっかい)という二人の仙人を描いた蝦蟇(がま)・鉄拐図や彼らに呂洞賓(りょどうひん)や鍾離権(しょうりけん)ら六人の神仙を加えた八仙図が流行した。禅宗の散聖として登場する寒山(かんざん)・拾得(じゅっとく)も後世次第に道教的色彩を強め、明時代の群仙図では八仙に混じって海上を浮遊します。
日本の神仙図は、多くはその図像的内容を中国画に依拠しますが、室町時代の雪村(せっそん)、江戸時代の曽我蕭白(そがしょうはく)等、画家の個性に応じて、多彩な変化が見られます。また渡唐天神(ととうてんじん)像や、中国の神仙に恵比寿(えびす)・大黒といった日本の神を加えた七福神図等、独自の展開があります。
今回の展示では、中国の宋時代から近代、日本の室町から江戸時代にかけての神仙図を総合的に取り上げ、その諸相と展開を概観します。